レビュー

【検証】VESSEL 電ドラボール の標準モデルとプラスモデルの違いを分解して比較してみる

今回はVESSELの人気商品、電ドラボールを分解してみたいと思います。

もう発売されてから結構時間が経っているので、今さら「ネジ締めのスピードがッ」「パワーがッ」とか言っても何も面白くないです。

なので今回は買ったばかりの新品を破壊して構造的に何が違うのか確認します。

今回購入した電ドラボール

今回購入、分解するのは以下の2商品です。

一番シンプルな標準モデルと、一番グレードが高い三段速度切り替えモデルになります。

価格差は約1000円。

変速のあり・なしのほかに、充電端子がmicro-Bとtype-Cだったりと、細かいところも違ったりします。

使ってみた印象としては、後者の方が使いやすいなとは思います。

ただ、正直目いっぱいに力を入れて使う工具というわけではないので、ねじ回しのスピードを変える必要がないなら安い方でいい気もします。

本締めするときは別のドライバを使ってくださいと公称されているくらいなので、どのぐらいトルクが出るのか、みたいなのはあんまり気にする必要がないかなと、個人的には思います。

、、、とまぁ、ここまでは機能的な部分で話してみましたが、耐久性が違うとなると、また話は変わってくるかなと思います。

今回検証のために2本とも買ったので後の祭り感はありますが、分解して中身を比較してみたいと思います。

構造的に1000円の違いがあるのか?

ほとんど変わらないのか?

その辺を見れたらな~と思います。

まずは公称スペックの違いを比較

分解する前に、まずはざっと、カタログスペックの違いを見ていきたいと思います。

価格の違い

まずは価格の違いから確認していきます。

今回はAmazonで購入したので、Amazonの価格を載せてみます。(下記は2024年6月時点での価格です。)

標準モデル:3600円
3段速度切り替えモデル:4800円

だいたい1200円くらい違いました。

充電ポートの違い

意外と重要な充電ポートの構成。

何度も抜き差ししていると徐々に傷んできて接触不良になるので、割と重要度高めかなと思います。

標準モデル:USB - typeB
3段速度切り替えモデル:USB - typeC

個人的にUSB - typeBは耐久性がクソだと思っているので、これは後者に軍配が上がるかなと思います。

本体カラー

本体カラーは以下の違いがあります。

標準モデル:黒ベース / 黒のラバーグリップ / 赤のボタン

3段速度切り替えモデル:濃い目のグレーがベース / 灰色のラバーグリップ / 赤色のボタン

前者はつやつやした加工、後者はざらついたつや消し加工になっています。

ですが実物はどっちもつや消しっぽい加工です。

3段変速モデルは全体的に濁った配色であんまりパッとしない感じです。

個人的には標準モデルの方がかっこいいと思います。

回転数

回転数の違いは下記の通り。

標準モデル:280 回転/分
3段速度切り替えモデル:280 / 340 / 400 回転/分

標準モデルの回転数は3段速度切り替えモデルの最低速になっています。

ですが正直最低速(280rpm)で十分な気がします。

速ければ速いほどほど作業性は上がるかもしれませんが、基本的に手回しドライバーとして仮締めに使うものなのでそんなに速くても仕方ない気がします。

作業性は280 回転/分でも十分にあります。

最大出力トルク(電動)

電動ドライバーとして使った場合の締め付けトルクは下記です。

標準モデル:2.0 N・m
3段速度切り替えモデル:1.2 / 1.6 / 2.0 N・m

最大トルクを見てみると、標準モデルと3段速度切り替えモデルは同じです。

”電動で締める際は仮締めの時”とパッケージの箱に大々的に書かれているので、ここでトルクの大小を比較する意味はあまりない気がします。

最大値としては同じなのでここは同列なイメージ。

最大耐久トルク(手動)

手動ドライバーとして使った場合の締め付けトルクは以下のようになってます。

標準モデル:10 N・m
3段速度切り替えモデル:12 N・m

本締めの時は手回しなので、実質的にこの耐久トルクがモノを言う感じがします。

この値が小さいと、本締めで手回ししたときにギヤが空回りしてまともに閉められない、といった感じです。

今回の場合、2N・m違いますが、個人的には標準モデルの耐久トルクで十分な印象です。(とりあえず空回りしたことはない。)

かなり固いねじを締めるとして、12 N・mまで耐えられるドライバーで10N・mのねじを締めるか、10 N・mまで耐えられるドライバーで10 N・mのねじを締めるか?

余力、というか、耐久性の面で見た方がよさそうな気がします。

落下防止コード取り付け

意外と重要な充電ポートの構成。

標準モデル:なし
3段速度切り替えモデル:あり

落下防止のコードをてで回転させるドライバーに取り付けるイメージがあまりないですが、世の中的には便利?な機能っぽいです。

個人的に回すもの紐がついてたら邪魔なのでいらない気がします。

耐衝撃性はそこまで高くなさそうなので、高所で作業する人には必須かもしれないです。

どうしても欲しかったら紐で固く結べば解決しそうなので、あまり選択の要素になる感じはしないです。

本体の重さ

本体の重さは下記の通り。

標準モデルの方が10g軽いです

標準モデル:160g
3段速度切り替えモデル:170g

・・・10g?

変わらん。

まとめ

公称スペックはこんなところかなと思います。

細かいところでは結構違いがあるんだな~といった印象でした。

ただ、両方使ってみた意見としては、あまり変わらない気がします。

手回しのドライバーが電動になった変化はでかいですが、紐がつけられたり回転数が変えられたりするのはおまけ程度な印象です。

速度切り替えは確かに便利ですが、長押しで切り替えるタイプなので、正直そんなにポンポン切り替えようとは思わないです。

よほど長いねじを締めていて「クソ・・・抜けないな・・・・」ってなった場合じゃないと途中で切り替えることはないかな~という印象

今回紹介していないハイスピードタイプのモデルは、回転が速い代わりにパワーが全くないので、間を取ってトルクと回転数両方取りたい人にはいいかもしれません。

外箱比較

ネットショッピングだと外箱がよくわからないので、全面載せておきます。

中に結構文量のある取説が入ってますが、外箱に記載の説明だけでも結構十分です。

書いてある内容はほぼ同じかなと思います。

正面

上面

3段速度切り替えモデルの方は、PLUS、ということになっているらしいです。

右側面

3段速度切り替えの方法が追加で記載されています。

左側面

3段速度切り替えモデルの方は充電ポートが上部に移動したので、その旨の記載があります。

背面

底面

以上。

☆破壊☆

カタログスペックの違いをざっと確認したので、次は分解して中身を見てみたいと思います。

手締めの耐久トルクが3段速度切り替えモデルの方が2 N・mほど上だったりと、構造的に耐久性が高くなってる可能性もありそうです。

このあたりに注目してみてみたいと思います。

本体の比較

本体のぱっと見のイメージですが、サイズ感は同じです。取説や付属品も同じようなものが入っています。

ねじの位置やグリップの材質の違いなどはありますが、そんなには変わらないイメージです。

ほかにいい選択肢がありますか、と聞かれると難しいですが、個人的には上位モデルの灰色グリップは微妙です。

分解方法

筐体を開けていきます。

まずは標準モデルから見ていきます。

まずは両側面のトルクスネジを2つとも外します。

その後、上部の赤色のアルミのリングにドライバーをひっかけて、フタを外します。

傷がつくのは不可避だと思います。

ちなみにグリップの下にはねじはないです。

一度はがすと元に戻せないので注意。

上部のリングを外すと側面にねじが見えるので、細めのドライバーでこれを外します。

次は3段速度切り替えモデルを分解します。

側面のトルクスネジを外すところは標準モデルと同じです。

標準モデルの場合は上部に充電ポートがあるので、フタを外す際に破壊しないか少し心配ですが、特に問題ありません。

マイナスドライバーを赤いアルミのリング下に通し、こじ開けるようにして開きます。

開けてみると以下のようになっていました。

念のためグリップをすべてはがしてみましたが、ねじが隠れていたりはしませんでした。

標準モデルのの方は上部に何も部品がないのでふさがっていましたが、3段速度切り替えモデルの方はType-C充電ポートを出すために半分穴が開いたような構造になっています。

左側の突起が紐を通してつるす穴だと思われます。

フタの構造ですが、標準モデルは薄いツメが4つ、3段速度切り替えモデルは分厚いツメが2つの構成になっていました。

分解してみてわかりましたが、実は3段速度切り替えモデルの方が筐体の厚みが分厚いです。

ラバーグリップがある部分は標準モデルの方が分厚く見えますが、よく見てみると3段速度切り替えモデルの方が分厚くなっています。

実際にばらしてみると結構違います。

3段速度切り替えモデルですが、かなり分解しにくいです。

あんまり開けさせないためか、筐体の強化のためかは分かりませんが、先端部分が赤いプラスチック部品で押さえつけられています。

3段速度切り替えモデルの方が、全体的にガチっとしたつくりになっている印象です。

細かいパーツも若干金がかかっている印象。

標準モデルの方の方は赤色のプラスチックだけで成形されていますが、3段速度切り替えモデルの方は赤と黒のプラスチックの組み合わせで成形されています。

ざっくり見るとあまり変わらないように見えますが、細かいところを見ると手間がかかっている印象を受けます。

・標準モデルのと3段速度切り替えモデルで、筐体と内部の配置はあまり変わらない
・標準モデルよりも3段速度切り替えモデルの方がプラスチックの使用量が多く、頑丈そうな印象

中身の構成

中身の構成は下記のような感じ。

上から順に、

①バッテリーセル
②モータ
③ギヤボックス
④先端チャック
⑤先端カバー

の構成になっています。

基板は両モデルとも側面に差し込むように配置されています。

一見、あまり違いはないように見えます。

・バッテリ、モータ、ギヤ、工具取り付けチャック、基板の配置は変わらない

バッテリーセルの違い

バッテリーのセルの違いを見てみます。

両モデルとも1つのセルを載せており、サイズ感は一緒です。

標準モデルのセルには下記の記載があります。

KAN Li-ion 18350 800mAh 3.7V B2J43

と記載があります。

対する3段速度切り替えモデルは、以下の記載があります。

KAN Li-ion 18350 800mAh 3.7V B2J43

と記載があります。

若干反射で見えにくいですが、同じバッテリーを積んでいるようです。

・バッテリーは全く同じものを積んでいる

基板と部品の違い

次に基板の違いを見てみます。

ぱっと見ですが、基板の色や部品の配置、部品の種類が異なることがわかります。

全部見てもあまり意味がないので、FETの型番を見てみます。

90N03AT MJB99B308

と記載があります。

検索してもあまり出てきませんでしたが、おそらく下記?ぐらいのスペックのFETっぽいです。(90N03が型番のようです。)

ドレイン-ソース間耐圧30V、ドレイン電流±9Aまで行ける模様。

対する3段速度切り替えモデルのFETは下記のものです。型番が異なります。

HSC90N03 AGB3221

と記載があります。

こっちは検索しても全く出てこなかったのですが、型番的に同じものだと思われます。

基板には前面に3個、裏面に2個のFETが取り付けられていました。

バッテリーの充電とモータの駆動に使用するFETは分かれてはいないようです。

充電、モータ駆動に使用するFETは、それぞれのモデルで同じものが使用されている
・標準モデルと3段速度切り替えモデルとで、FETの性能的な違いはなさそう

モータの違い

次はモータを見てみます。

3段速度切り替えモデル(以下の画像左)の方が、モータの長さが長い。。。

ここにきて大きな違い発見です。

モータのサイズが3段速度切り替えモデルの方が若干長くなっています。

定格電圧はどちらも同じ3.6Vになっています。

同じ電圧のバッテリ、同じ定格電圧のモータなので、3段速度切り替えモデルの方が高回転型、なのかもしれないです。

回転数上げた分トルク稼ぐのじ磁石を大きく(長く)したのかな・・・・

・3段速度切り替えモデルの方が強力そうな(サイズの大きい)モータが搭載されている

ギヤボックスの違い

次にギヤボックスを見ていきます。

若干ではありますが、3段速度切り替えモデルの方が、全長が短く、太さが太くなっています。

モータに取り付けられたピニオンギヤのサイズ、段数は以下のようになっていました。

標準モデル(⇦)が12段、3段速度切り替えモデル(➯)は15段になっています。

ギヤボックス内のギヤをすべて取り出してみると、下記のような構成になっていました。

どちらも遊星歯車方式、グリスの漏れを防ぐプレートから出力軸まで、大きな構成は変わらないようです。

遊星ギヤの内容は下記サイト様がざっくり紹介してくれています。

ただよくよく見てみると結構違いがあります。

まずは1段目のギヤを見てみます。

以下は標準モデルの1段目のギヤになります。

以下は3段速度切り替えモデルの1段目のギヤになります。

3段速度切り替えモデルの方はギヤ内側に円環状の突起があり、ギヤの側面が次段の遊星キャリア兼サンギヤに直接すらないような工夫がされています。

また標準モデルよりも3段速度切り替えモデルの方が遊星ギヤの穴径が大きく、遊星キャリアの軸が太くなっています。

続いて2段目。

以下は標準モデルです。

以下は3段速度切り替えモデルです。

こちらは裏面の写真だったことに後から気付きました、、、

上記画像だとわかりませんが、1段目と同じように、3段速度切り替えモデルの方はギヤ内側に円環状の突起があり、ギヤの側面が次段の遊星キャリア兼サンギヤに直接すらないような工夫がされています。

軸の太さも3段速度切り替えモデルの方が太いです。

またこのほかの特徴として、3段速度切り替えモデルの方はギヤが接触する面に面取り加工がおこなわれています。

左が3段速度切り替えモデル、右が標準モデルです。

細かいところでも結構違うなと感じます。

続いて三段目を見てみます。

以下は標準モデルです。

以下は3段速度切り替えモデルです。

続いて3段目。

遊星ギヤの加工は先ほどと同じく、3段速度切り替えモデルの方にはギヤ表面に円環状の突起があります。

次段の軸の太さについてですが、3段目に関しては標準モデルの方が、太いです。

標準モデルの方は、次段のギヤの軸の太さが、細➯細➯太

3段速度切り替えモデルの方がは、太い➯太い➯太い

といった感じになっていました。

個人的には3段速度切り替えモデルの方が耐久性がありそうだと感じました。

一番先端の出力軸部分は以下のような構成になっていました。

⇦が標準モデル、➯が3段速度切り替えモデルになります。

標準モデルの方は先端部の工具取り付けチャックの一端が六角になっているようで、はめ込んだような構成になっています。

対する3段変速モデルの方は、一体型の金属で成型されていることがわかります。

全体のパーツ数や構成は同じでしたが、つくりは結構違っていることがわかりました。

・ギヤの加工は3段速度切り替えモデルの方が丁寧、摩擦を減らすような工夫が見られる
・3段目のギヤを除き、遊星ギヤの軸の太さは3段変速モデルの方が太くなっている

分解した結果

今回分解してわかったことをまとめてみると以下のようになりました。

・標準モデルのと3段速度切り替えモデルで、筐体と内部の配置はあまり変わらない
・標準モデルよりも3段速度切り替えモデルの方がプラスチックの使用量が多く、頑丈そうな印象

・バッテリ、モータ、ギヤ、工具取り付けチャック、基板の配置は変わらない

・バッテリーは全く同じものを積んでいる

充電、モータ駆動に使用するFETは、それぞれのモデルで同じものが使用されている
・標準モデルと3段速度切り替えモデルとで、FETの性能的な違いはなさそう

・3段速度切り替えモデルの方が強力そうな(サイズの大きい)モータが搭載されている

・ギヤの加工は3段速度切り替えモデルの方が丁寧、摩擦を減らすような工夫が見られる
・3段目のギヤを除き、遊星ギヤの軸の太さは3段変速モデルの方が太くなっている

まとめ

今回はVESSELの電ドラボールの標準モデルと最上位モデルについて、分解して中身の比較を行ってみました。

ぱっと見似たように見えますが、思ったよりも異なるつくりになっていました。

標準モデルに対して3段速度切り替えモデルは、

・高回転型のモータにしてトルクが落ちた分、モータの全長を長くして(磁石をサイズUP)して同じトルクを維持できるようにした
・ギヤ周りを強化して、2N・m高い手締めにも耐えられるようにした

そんな印象を受けました。

まぁ、VESSELのほんとのところはわからないけど・・・・

価格差は1000円程度、その違いに見あう違いがあるのか、そのあたりは見る人によって変わりそうです。

個人的なまとめとしては、

標準モデルは手回しドライバーが電動化された感動を味わいたい人、

3段速度切り替えモデルは、遅く回したい、速く回したい、ちょっと耐久性も気にしたい、といったところでしょうか?

ま、好きな方にしましょう。

それでは、また。

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